一つの夜が紡ぐ運命の恋物語を、あなたと
 この園では職員も園児と同じ給食をとる。普段は自分の担当する零歳児の保育室で、他の保育士と一緒に食事をしている。子ども達が午睡(ごすい)、いわゆるお昼寝をしている間も、部屋には必ず誰かがいる必要がある。二歳までの乳児はとくに、寝ている間も決まった時間毎に呼吸のチェックをする必要があり、ゆっくり休憩を取ることができないのが現状だ。
 だが今日は風邪で休んでいる子が多く、人手は足りている。由依は少し熱っぽいからと言い訳をし、一人で休憩していたのだった。

 松永先生は由依の前に座ると、早速箸を持ち食べ始めた。

「瀬奈先生は食べないの?」

 由依の前には、かなり少なくしてもらった給食がまだ手付かずで置かれていた。この部屋に来て十五分ほどになるが食べる気が起こらず、ずっと放置していた。

「い、いただきます」

 手を合わせて由依も箸を持つ。ここのところ、味覚が変わってしまったように何を食べても美味しく感じない。それでも無理矢理、流し込むように食事を口に運んだ。

「そうだ。瀬奈先生。運動会のときはありがとね」

 箸を持つ手を止め松永先生は言う。
 つい数日前、園の大きな行事の一つである運動会が終わったばかりだった。
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