新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜
「陽子ちゃんが倒れて入院したって事。 貴博、 相当ショックだったみたいだから」
「そんな……」
そう言い残して、 明良さんは病室から出て行った。
ショックだった?
相当悩んでいるって……高橋さん。
トントン。
エッ……。
「は、 はい」
あまりのタイミングのよさに、 一瞬高橋さんかとも思ったが、 ドアの向こうにはまゆみが立っていた。
「どぉ? 少しは、 元気そうになったかな?」
「元気そうって、 まゆみ」
「アッハッハ……」
それから明良さんの言った言葉もしばし忘れて、 会社の事などをまゆみが話してくれたので、 病室での退屈だった私にはそれがとても刺激的で、 凄く嬉しかった。
「人事異動があってさ。 今度、 総務に営業から1人来るのよぉ……。 それも、 また男子でね」
「そうなの?」
そうか……もう、 そんな時期だったんだ。
経理は、 どうなっているんだろう?
「まゆみ。 経理は、 どうなったか知らない?」
「よくぞ! 聞いてくれました」
まゆみは得意げになって、 胸を張った。 何といっても、 まゆみの情報網は本当に凄いから。
「経理は、 新入社員だけみたいだよ」
良かった。
それを聞いて、 思わず胸を撫で下ろした。
「会計もないって?」
そこが、 いちばん気がかりだったりする。 でも、 それが間違いの元だったのかもしれない。
「多分……多分ないと思うよ」
「多分? じゃ、 じゃあ、 あるかもしれないの? ゴホッゴホッ……ゴホッ……ゴホッ」
思わず大きな声を出して、 咳き込んでしまった。
「陽子。 大丈夫?」
黙って頷いたが、 なかなか咳が止まらなかった。
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