新そよ風に乗って ⑦ 〜Saudade〜
「ほら……ハイブリッジって、 まったくそういう事に関してポーカーフェイスだからわからないのよ。 口硬いしさぁ……でも、 きっとどっからも漏れて来ないところを見ると、 ないと思うよ。 それに……陽子も異動ないでしょう。 今の状態では……もしそんな事になったら、 私が黙ってないわよ」
「まゆみ……」
何故か、 涙が出てきてしまった。
「またぁ。 泣かないでよ。 大丈夫だって……変に不安にさせるような事言っちゃって、 ごめんね。 それに、 ハイブリッジだって……」
トントン。
エッ……。
「はい」
今度は、 誰だろう?
ドアをノックする音がして、 代わりにまゆみが返事をすると、 スッとドアが引かれた途端、 思わずまゆみと顔を見合わせてしまった。 まさに今、 まゆみが話していた人……そこには高橋さんの姿があった。
どうしよう。 私……今どんな顔してる?
すると立ち上がって、 まゆみは病室の中に入ってきた高橋さんの前に立ちはだかった。
まゆみ……。
「こんにちは!」
「こんにちは」
対峙する高橋さんとまゆみの姿を、 ベッドに寝ながら見守る事しか出来ない。
まゆみ……。 お願いだから、 何も言わないで。
「陽子。 また来るね」
「えっ? だって、 まゆみ。 今来たばっかりなのに……」
「お大事にね。 早く元気になるんだよ」
そう言ってまゆみは私の方に向けていた身体を、 今度は目の前の高橋さんへと向けた。
「頭のいい部長さんの事だから、 私の言いたい事は百も承知かもしれないけど……」
「……」
「まゆみ!」
「いい加減、 余計な邪心は捨てて。 自分にとって、 何が一番大事なのか。 胸に手を当てて、 よーく考えてみた方がいいわ! それじゃ……」
まゆみはそれだけ言うと、 高橋さんの横を通り過ぎてドアを開けた。
「神田さん」
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