五年の想いを抱えて
「え?」

晴葵が言ったことをうまく聞き取れなかった。

指の間から覗く耳や頬が赤く染まっているのはきっとこの熱気のせいだけではないだろう。

「可愛すぎってこと。ほら、はい」

今度は私が赤くなる番だった。

ためらいがちに差し出されたたこ焼きのつまようじに手を伸ばす。

そっと口に入れたたこ焼きからはソースの風味と鰹節がふわっと香った。

「あ、おいしい」

「もう、ソースついてるよ」

「えっ」
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