別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
「拓海……ありがとう、拓海。ありがとう……っ」

 瞳はそう言いながら泣きだしてしまった。まさか泣くとは思っていなかったから、拓海は一度手を洗うと慌てて瞳のそばに寄って、その涙を拭ってやった。

「そんなに泣くなよ」
「だって……」
「嬉しかった?」
「うん。嬉しい。すごく嬉しい……でも、心配になった」

 喜んでくれているのだろうというのはわかった。でも、まさかこれで心配をかけるとは思わなかった。拓海には心配になるその理由がわからなかった。

「なんで?」
「拓海がまた嫌になって、元の関係になったら嫌だもん。無理してほしくない。もう心が離れるのは嫌だ」

 過去の二人の状態を思い浮かべて不安になっているのだとわかった。ろくに会話もできなくなっていたあの頃の関係には、拓海だって戻りたくない。でも、拓海は本当に無理をしているというわけではなかった。本当にできる範囲でやっていただけなのだ。

「瞳……大丈夫だから。無理はしてない。できる範囲でやってたって言っただろ? たぶん、瞳がもっとよく見たら、手の行き届いてないところはいっぱいある」
「でも、休日も聖と私のために頑張ってくれてたのに、平日までそんなに頑張ったら疲れちゃう……」
「それを言ったら、瞳のほうがずっと頑張ってただろう」

 瞳の実家で瞳の涙を見たとき、瞳が頑張りすぎているのだとわかった。それにこの家でも瞳は拓海の見えないところでかなり頑張っていたのだと思う。今の拓海にはそれがわかった。
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