別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
第二章 快適な一人暮らし Side拓海

1. 自由な日々

 しばらくは気ままな生活が送れる。自由を満喫できる。瞳から半年実家に戻ると聞かされたときに拓海が思ったのはそんなことだった。

 瞳との生活は嫌いではないし、瞳が家のことをかなりやってくれているおかげで快適に暮らせているとも思う。でも、こだわりの強い瞳と一緒にいると時々疲れてしまうことがあって、一人でいれば羽が伸ばせるのになとも思ってしまうのだ。

 ものすごく口うるさく言われるわけではないし、完全強制というわけでもないが、それでも文句を言われると面白くない。少しも協力したくないなんてそんなことは思っていないが、時にはだらだらと過ごしたいし、疲れているときには後回しにしたいこともある。けれど、きっちりとしている瞳の前ではなかなかそういうことは言いづらかった。

 瞳のほうが家のことをしてくれている分、一人になれば大変になる面もあるだろうが、拓海は瞳と暮らす前は一人暮らしをしていたのだし、一人の生活でものすごく困るということはないはずだ。

 だから、瞳と半年離れることに関して、拓海は特に何の不満も湧かなかった。別にずっと離れて暮らしたいだとかそんなことは思っていないが、それでも久しぶりの一人の時間を歓迎する気持ちのほうが大きかった。

 もちろん瞳の実家が困っているなら協力したいという気持ちもあるし、かわいい義弟のためなら何かしてやりたいという気持ちもある。瞳は周囲の人間のことを放っておけない質だから、今回の提案は瞳らしいと思ったし、その意見を尊重したいとも思った。だから、反対する気はまったく起きず、瞳のいない半年間は気楽に暮らせると思って、拓海は瞳のことを気軽に送り出した。


 実際、瞳が実家に帰ってから、拓海は快適な一人生活を送っていた。
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