別居恋愛 ~もう一度恋からはじめよう~
 瞳が帰る時期についての話をしてから二週間後。いつものように瞳の実家を訪れると、リビングに瞳の母の姿があった。

「拓海くん。いらっしゃい。久しぶりねー」
「はい。ご無沙汰しています」
「ずっと聖の勉強見てくれてたんでしょ? 本当にありがとうねー」
「いえ、頼ってもらえると嬉しいですから。それに三人で過ごすのがとても楽しかったので、自分のためにここに来ていたようなものです」
「あら、そうなの?」
「はい。聖の受験終わるまでは、週末お世話になりますね」
「いえいえ。お世話になってるのはこっちだから。聖、本当によかったわね。瞳も拓海くんもいてくれて。あんたは幸せ者ね」

 同じくリビングにいた聖は、その言葉を聞いてなぜだか表情を歪めていた。とても喜んでいるようには見えない。何か不満を持っていそうな顔だった。

 近くにいた瞳のほうを見てみると眉を寄せて困った顔をしていたから、何か思い当たることがあるのだろう。でも、わかった上で何も言えない様子だった。

「聖。聖の部屋でちょっと話しよう」
「え? うん」

 拒絶されたらどうしようかと思ったが、聖は大人しく拓海の言葉に従ってくれた。

 聖と二人で聖の部屋へと入る。近しい人間には言いにくいこともあるだろうと思い、拓海と二人きりの環境を作った。今は聖にとって大事な時期だし、悩みがあるならそれを解消してやりたかった。
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