桜ふたたび 前編
ジェイがドアを閉めるや否や、燃えるようなブロンドのアフロヘアが、セルリアンブルーの瞳を輝かせて、ハヤブサの如く駆け寄ってきた。

AXファンド、中でもジェイが率いるチームの実態は、謎に包まれている。
彼らは何を目的にどこから来てどこへ行くのか。常にAXグループを牽引しながら、厳重なセキュリティに守られ秘密めいた彼らは、〝サンクチュアリ〞と呼ばれていた。

『フランクフルトにサーカスを開く。ハンドラーはレオ、ニコは先にベテルギウスを片付けてから参戦してくれ。彼はレディにポワゾンを嗅がされたようだ。十分後に、プロキオンの五%を放って、狂犬たちの食欲を見学させてやれ』

コツコツと廊下に響く靴音のリズムと同じ速さで、ジェイは暗号めいたことを淡々と指示していく。
二人並ぶと背格好も歩き方もよく似ていて、髪の違いこそあれ、後ろ姿なら間違える者もいるだろう。

『デッドラインは?』

『exactly18 o'clock』

ジェイとニコはほぼ同時に腕時計の秒針までを確認し、頷いた。

『Aye,Aye,Sir‼』

悪戯小僧のような笑顔で敬礼し、ニコはハヤブサのように飛んでいった。
< 119 / 298 >

この作品をシェア

pagetop