桜ふたたび 前編
扉が再び開く。
怪訝に見ていたジェイは、男たちの間から伸びた白い指に腕を掴まれ、あっという間にカゴの内に引きずり込まれていた。
《逢いたかった~》
いきなり女に抱きつかれ、さすがのジェイも身構えた。
男たちも、首をギクシャク、振り向くべきか迷っている。
首に腕を回したまま、小悪魔のように笑うセクシーな口元に、見覚えがあった。
《クリス?》
《Si!》
黒いウイッグの下から現れたダークブロンドが、光を織り込んだ絹のように波打った。
《今夜は仮装パーティーか?》
黒いサングラスをずらして、アクアマリンのような美しい瞳が苦笑した。
《事情はあとで説明するわ。ね、ちょっと部屋で呑みましょう?》
エレベータのインジケータが五階で止まり、軽やかなチャイムと共に扉が開く。
『あなたたち、ここでいいわ』
クリスはジェイに体をぴたりと寄せ、腕を絡めたまま男たちを押し分けるようにして降りていく。
男たちはおろおろと、彼女の後ろに従う黒縁メガネの女へ視線を向た。
小柄ながら両手に大きな荷物を軽々と抱えたおかっぱ頭は、振り返ったジェイに同情するように肩をすくめると、後ろを振り返りもせず手を挙げ、男たちに解散の合図を送った。