桜ふたたび 前編
❀ ❀ ❀
「澪……そんなに急ぐな」
白いレースの天蓋の下、澪は躊躇うことなく駆け上ってゆく。
肩にすがりつき、餌をもらう雛のように舌を貪り、性急に自らリズムを刻む。
ジェイは苦悶の表情を浮かべた。狭く柔らかく蠢くように、澪はより深くへと男を導き締めつけ、いつも抗えない。
そのうえ、いつもは受身な澪が、淫らに快感に溺れる様は扇情的で、沸点が早まる。
彼が自らを解き放ったとき、午後の光のなかで、白い裸身がひときわ烈しくうち震えた。
そうして一瞬の静息の後、澪は地上へ墜ちた小鳥のように、ジェイの胸へ沈んでいった。
ジェイは、そっと澪の体をベッドへ横たえた。
澪はすでに午睡のなかにいる。肉体とともに心まで天国の門を潜ったのか、すうすうと安らかな寝息を立てていた。
──どうしたら、この朝露のように儚く愛おしい存在を、自分だけの掌に留めておけるのだろう。
このまま永遠に、傍らに眠らせておけたら……。
ジェイは細い喉元へ、そっと手をかけた。親指に規則正しい脈動が伝わってくる。
指先に力をこめたとき、彼女は少し身じろぎ、「ううん……」と寝ぼけた声を出した。
ジェイはフッと笑うと、その手を滑らせ、彼女のいのちのぬくもりを確かめるように、頬を撫でた。
澪に対する愛情は、ときおり狂気を覚えさせる。
体を重ねても、愛の言葉を聞いても、まだ何か物足りない。彼女の全てを征服しているはずなのに、この手に掴みきれない不安が残る。
──もどかしさの果てに、いつか本当に、澪を壊してしまう日がくるかもかもしれない。
ジェイの胸に、黒い予感がひとひら、舞い降りた。
「澪……そんなに急ぐな」
白いレースの天蓋の下、澪は躊躇うことなく駆け上ってゆく。
肩にすがりつき、餌をもらう雛のように舌を貪り、性急に自らリズムを刻む。
ジェイは苦悶の表情を浮かべた。狭く柔らかく蠢くように、澪はより深くへと男を導き締めつけ、いつも抗えない。
そのうえ、いつもは受身な澪が、淫らに快感に溺れる様は扇情的で、沸点が早まる。
彼が自らを解き放ったとき、午後の光のなかで、白い裸身がひときわ烈しくうち震えた。
そうして一瞬の静息の後、澪は地上へ墜ちた小鳥のように、ジェイの胸へ沈んでいった。
ジェイは、そっと澪の体をベッドへ横たえた。
澪はすでに午睡のなかにいる。肉体とともに心まで天国の門を潜ったのか、すうすうと安らかな寝息を立てていた。
──どうしたら、この朝露のように儚く愛おしい存在を、自分だけの掌に留めておけるのだろう。
このまま永遠に、傍らに眠らせておけたら……。
ジェイは細い喉元へ、そっと手をかけた。親指に規則正しい脈動が伝わってくる。
指先に力をこめたとき、彼女は少し身じろぎ、「ううん……」と寝ぼけた声を出した。
ジェイはフッと笑うと、その手を滑らせ、彼女のいのちのぬくもりを確かめるように、頬を撫でた。
澪に対する愛情は、ときおり狂気を覚えさせる。
体を重ねても、愛の言葉を聞いても、まだ何か物足りない。彼女の全てを征服しているはずなのに、この手に掴みきれない不安が残る。
──もどかしさの果てに、いつか本当に、澪を壊してしまう日がくるかもかもしれない。
ジェイの胸に、黒い予感がひとひら、舞い降りた。