桜ふたたび 前編

ジェイの肩が落ちかけたとき──

「もし……」

「もし?」

ジェイは祈るような気持ちで繰り返した。

「もし、許してくれるなら、時間をください。わたしが、自分の感情から逃げ出さなくなるまで。そしてジェイが、元の自分を取り戻すまで」

希望──。
その光がどれほど淡くとも、絶望の淵にある者にとっては、命綱だ。

──何でもいい。光さえ差し込めば、何とか今を堪えられる。

「わかった。……待ってる」

澪は小さく、強く、頷いた。

「愛してます。離れていても、心はジェイのところへ置いてゆきます。だから、いつか必ず、わたしを迎えにきてください」

微笑んだ澪の頬に、朝露のような涙がそっと伝い落ちた。
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