桜ふたたび 前編
「どうせ後悔するのなら、前に進む方がいい。悪路であろうと行き止まりであろうと、必ず得ることがある。それに、進む限り道はいくらでも選び直せる」

ジェイは澪の前に立ち、その頬にそっと触れた。

「君は、雨が降るからと、家に閉じこもったまま一生を過ごすつもり? それより、私と外へ出て恋をしよう。きっときれいな虹を見せてあげる」

吸い込まれそうな瞳の奥には、不思議な闇が横たわっている。闇と闇とが解け合ったとき、夜明けが生まれるのだろうかと、澪は思った。

軽率な一言で相手を傷つけてしまうかもしれない。不用意な行動が誰かに迷惑をかけるかもしれない。嫌われて疎まれたら、また置き去りにされてしまう。
そんな不安を抱え、暗夜のなか身動きできなくなった澪に、彼は美しい虹を見せてくれるのだろうか……。

再び、窓外が光った。

澪はただ神に導かれる求道者のように、頬に置かれた手に、震える手を重ねた。

「君の答えは? Yes or No?」

「……イエス」
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