忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―
 夜。

 スマートフォンが震えた。

 亜美はすぐに手に取った。

 先生。

 そう思った。

 けれど。

 画面に表示されていた名前は。

 幸也。

「…………」

『明日、話せる?』

 指が止まった。

 待っていた。

 幸也からの連絡を。

 なのに。

 明日。

 幸也と話す。

 そう思っただけで。

 息が詰まった。

 何を話せばいい?

 何を聞かれる?

 丈とのことを聞かれたら。

 また。

 答えられなかったら。

『丈と何なの、亜美ちゃん』

「…………」

 話せない。

 そう思った。

 今のままじゃ。

 幸也と話せない。

 亜美は返信もできないまま。

 丈との画面を開いた。

『先生』

 打つ。

『幸也さんから、明日話せるか聞かれました』

 送った。

「…………」

 待つ。

 来ない。

 画面を閉じる。

 すぐに。

 また開く。

「先生……」

 さっきまで。

 幸也と話すことばかりが怖かった。

 なのに。

 今は。

 丈から返事が来ないことの方が。

 怖くなっていた。

「…………」

 先生がいない。

 その言葉が浮かんだ瞬間。

 胸の奥が冷たくなった。

 いない。

 話せない。

 聞けない。

「…………」

 いつまで?

 もし。

 このままずっと。

 返事が来なかったら。

 亜美はスマートフォンを握り直した。

 そこから先は。

 考えられなかった。
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