忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―
 講義が終わったあと。

 亜美は一人でベンチに座っていた。

 スマートフォンを開く。

 丈との画面。

 何となく。

 指を上へ滑らせた。

 少し前。

 もう少し前。

 大学へ入る前まで。

 古いやり取りが現れる。

『先生、聞きたいことがあります』

『いいよ』

『変なことでもいいですか』

『亜美が聞きたいなら』

「…………」

 こんなこと。

 送っていたんだ。

 少しだけ。

 頬が熱くなった。

 さらに遡る。

『今日、少し残ってもいいですか』

『いいよ』

『家帰っても暇なので』

『じゃあ勉強してけば』

「…………」

 高校生の頃。

 塾に残っていることが多かった。

 丈は。

 帰れとは言わなかった。

 質問すれば答えてくれて。

 何も話さない日も。

 そこにいた。

 亜美は。

 もう一度。

 画面を上へ滑らせた。
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