忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―
「幸也と何かあった?」

 亜美の指先が止まった。

「…………」

『俺たち、別れよう』

 あの声が戻ってくる。

「……別れました」

 丈が亜美を見る。

「そっか」

 それだけだった。

「……好きだったんです」

「うん」

「ずっと」

「知ってる」

「高校生のときから……ずっと好きでした」

「うん」

 声が震えた。

「やっと付き合えたのに」

「…………」

「終わっちゃった」

 涙が落ちた。

 丈は何も聞かなかった。

「私……別れたくなかったです」

「うん」

「幸也さんのこと、今も好きです」

「うん」

 否定されない。

 責められない。

 ただ聞いてくれる。

「でも……」

 亜美は丈を見た。

「会わないって、言えなかった」

「…………」

「もう会わないって言ったら、別れないでいられたかもしれないのに」

 声が掠れる。

「言えなかったんです」

「…………」

「先生に会わないなんて……できなかった」

 幸也さんと別れたくなかった。

 本当に、別れたくなかった。

 それなのに。

 先生と会えなくなる方を選べなかった。

 亜美は丈の袖を掴んだ。

「先生」

「うん」

「私……間違ってますか?」

「どうして?」

「…………」

「幸也が好きなのに、俺に会いたかったから?」

 亜美は小さく頷いた。

 丈は少しだけ亜美を見た。

「亜美が決めたことなら、いいんじゃない?」

「……いいんですか?」

「うん」

 それ以上は言わなかった。

 また。

 受け止めてくれた。
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