佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

「食べる。でも、朝、俺に合わせることになるけど」

「どうせ、どっちかで過ごすんでしょ」

「まぁな…だからといって家政婦させたいわけじゃないからな。そこは間違えるなよ」

「うん、わかってる」

「なら、いいわ。じゃあな」

「いってらっしゃい」

小さく手を振るしおりの可愛らしさに、零士は感動で言葉を詰まらせる。

「忘れもの」

しおりの頭部を引き寄せ、チュッと口付けて微笑んだ。

「行ってきます。しおりも仕事頑張ってな」

「うん、ありがとう」

甘酸っぱいキスの後に、1人残ったしおりは唇をなぞるのだ。

「全然違う」

前の恋とは違いすぎて、思い思われる恋に頬をあげて浮かれるのだ。

今はただ、幸せな2人だった。

「さて、私もご飯食べよう」

零士は、出社して早々に、頭取室に呼び出される。

贅沢な作りのデスクを前にする年配の男性に、頭を下げた。

零士の父の弟、東雲 誠士だった。

零士の父は、東雲グループの社長を務めていて、次男の叔父は、この銀行を任されている。

そしていつか、次男の零士もこの男のように、この席に座るかもしれないのだ。

「頭取、およびだと伺ったのですが」

「まだ始業前だ。もっと気楽にしてくれ」

「ご用件は、なんですか?」
< 121 / 182 >

この作品をシェア

pagetop