佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「食べる。でも、朝、俺に合わせることになるけど」
「どうせ、どっちかで過ごすんでしょ」
「まぁな…だからといって家政婦させたいわけじゃないからな。そこは間違えるなよ」
「うん、わかってる」
「なら、いいわ。じゃあな」
「いってらっしゃい」
小さく手を振るしおりの可愛らしさに、零士は感動で言葉を詰まらせる。
「忘れもの」
しおりの頭部を引き寄せ、チュッと口付けて微笑んだ。
「行ってきます。しおりも仕事頑張ってな」
「うん、ありがとう」
甘酸っぱいキスの後に、1人残ったしおりは唇をなぞるのだ。
「全然違う」
前の恋とは違いすぎて、思い思われる恋に頬をあげて浮かれるのだ。
今はただ、幸せな2人だった。
「さて、私もご飯食べよう」
零士は、出社して早々に、頭取室に呼び出される。
贅沢な作りのデスクを前にする年配の男性に、頭を下げた。
零士の父の弟、東雲 誠士だった。
零士の父は、東雲グループの社長を務めていて、次男の叔父は、この銀行を任されている。
そしていつか、次男の零士もこの男のように、この席に座るかもしれないのだ。
「頭取、およびだと伺ったのですが」
「まだ始業前だ。もっと気楽にしてくれ」
「ご用件は、なんですか?」