佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「俺は、香織さんさえ良ければ、何人ででもいいです」
「私、店長から2人分の有給申請取りますから、お願いします」
「無理でしょ。それに、この人達は土日が休みで、私達は、土日が忙しいのよ。無理無理。それにどうして、わざわざ寒い場所へ行かないといけないの」
「しおりさん…」
黙って携帯を触っていた東雲が、口を開いた。
「お正月休みって、あるの?」
「あります。うちの店は、3日まで休みです」
「俺らと一緒だな。加賀の実家近くとは行かないけど、近場で、大晦日から宿泊できる温泉宿見つけたけど、行く?」
「行きます。しおりさん行きましょうね」
「なら、4人で予約するわ」
「ちょっと、勝手に決めないでよ」
「予定あるのか?」
「多分、ないけど。…予定入ったら行かないからね。いい?」
脳裏に、辰巳が過ぎるしおりだったが、今日の辰巳を見て、2人の未来がわからなくなっていた。
だから、曖昧に答えるしかなかったのだ。
「いいぜ。おっ、2部屋取れそうだ」
「私達、運がいいですね」
嬉しそうにニコニコ笑う香織に、しおりは大きくため息を吐いた。
(都合良すぎでしょ)
そう運がいいなんて、そうそうあるものじゃない。