佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

実は、東雲 零士は、代々続く東雲家の御曹司であり、芝園銀行元頭取、芝園グループトップの東雲 零治郎の孫にあたる。

そして、予約した宿は、東雲家が贔屓にしている宿で、年間で押さえている部屋があり、本来泊まるはずだった人物から譲ってもらったのだ。まぁ、ダメになっても返せばいいだけなので、痛くもないということだ。

加賀も、旧家の加賀家の御曹司である。

あえてそのことを言わないのは、2人は、昔から財力と妻の座を狙う女達にヘキヘキし、そこらの男達と変わらない普通の生活を送っていても、外見に近寄ってくる女ばかりで、この女と思う出会いがなかった2人。

一個人を見てくれる人物に会える運命なんてないのだと諦め、親の決めた女と結婚するしかないなら、適当に遊んでおこうと自慢できない爛れた関係を結んできた。

だが東雲は、しおりに出会った。男がいても、そうそう、負ける気はない。なんとしてもしおりの心を掴みたいと企んで、この話をうまく利用し、ダブルで温泉デートまでこぎつけた。

そして、加賀も香織の物怖じしないはつらつさに出会って、何かを感じている。

だからか、行動が早い。
真面目そうに振る舞っている悪知恵の働く加賀は、実家の話を持ち出し、香織が興味を持った瞬間、企んだはずだ。零士が、動くことを見越していたに違いないと、零士は、大地に向けて笑みを浮かべる。
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