佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
大丈夫、まだ大丈夫…別れの言葉を言われてないから大丈夫。
自分自身へ向けて慰めの言葉をかけるしおりだった。
心の中が落ち着かないまま、いつもと変わらない日常を過ごして数日経った。
休憩に入ると、携帯に辰巳からメールが届いていることに気がつく。
『12月頭に、そっちで仕事があるから、夜に会おう。場所と時間は、また改めて連絡する』
思いやりのない簡潔な文章に、苦笑いしかない。
「何日も待たせて、これだけ?」
今までの辰巳と違う温度差に、別れの予感は確信めいてくるのだ。
「もう、ダメなのかな…」
ポツリと呟く声と同時に、スカートにぽとりとふた粒の水跡が落ちていた。
なんとか『連絡待ってます』と送り返したのだ。
その頃、しおりからの返事を受け取った辰巳。
自分のそっけないメールに、しおりのいじらしい文は、辰巳の心にチクリと刺す。
何日もかかって、やっと送った文。
一年でしおりと過ごした時間は、他のカップルよりも断然少ない。
それでも、文句も言わず待っていてくれる彼女に、愛しさとそれなりの愛情は持って付き合ってきた。
だが、それが徐々に苦痛に変わったのはいつ頃だろう?
いつ来るかわからない連絡を待っている姿はいじらしいと感じる一方で重いとも感じ出したのは…