佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
やはりと、ぎゅっと膝においていた手を握り込み、涙を堪える。
「私が嫌いになりましたか?…たまに会えるだけでいいです。別れたくない」
「そういうとこが息苦しいんだ。それなりに愛情はあったけど、しおりが俺を思う気持ちと同じ気持ちで返せない。俺を一途に待つ…そんなしおりの気持ちは重いんだよ」
「重い…会いたくても我慢して待って、重いですか。…それじゃ、仕方ないですよね」
わなわなと震える唇を強く引き結び、立ち上がったしおりは、窓越しに辰巳を見つめる。
「大好きでした。今までありがとうございました」
あっさりと身を引くしおり。感情をぶつけられ、こじれる覚悟でいた辰巳は拍子抜けして振り返ると、出ていくしおりの後ろ姿だった。
ドアが閉まる音と同時に、誰もいないドアを見つめ呟く。
「ごめんな」
その一言に、どれだけの感情を込めていたか…
冷たく、つきはなしてごめんな。
愛せなくてごめんな。
待たせてばかりでごめんな。
気持ちに応えられなくてごめんな。
幸せにできなくてごめんな。
俺を一途に好きでいてくれてありがとう。
それを言葉にしてしまえば、傷つける立場の自分が楽になるだけで、言葉にしてはいけないと心にとどめたのだ。