佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「もう、大丈夫だよ。東雲さんが胸を貸してくれたから」
茶化すつもりで答えたしおりだが、東雲は真剣な表情になる。
「今は聞かない。だけど、心の整理がついたら話してくれ」
「…うん、わかった」
「目冷やして寝れよ。おやすみ」
ポンと頭を撫で、東雲は、自分の部屋に戻っていった。
東雲の優しさに触れたしおりは、「ありがとう」と呟き部屋のドアを開け入っていった。
東雲は、自分の玄関先でその音に聞き耳をたて、しおりの前で見せなかった笑みを浮かべる。
零士の予想通りなら、待ち望んでいた展開である。
一緒にラーメン店へ行った日、しおりの様子がおかしいことに気づきつつ、それに触れずにいた。
そして今日、夜になっても玄関ドアが開く気配もなく、部屋に人の気配を感じないことで、外の気配を伺っていた。
しおりをストーカー扱いした俺が、まるでストーカーだなぁと自嘲しながら。
外に響くカツン、カツンと歩く音が止まり、零士はドアを開けると、そこに悲しみを堪え、目に涙を溜めて我慢して唇を引き結ぶしおりがいて、駆け寄っていた。
愛する人の王子様になる為に、腹黒さを隠し、優しい顔で抱擁するのだった。
「よしよし、涙が枯れるまで俺の胸で泣きな」