今ドキの悪役令嬢は婚約破棄どころか、婚約しません!─せっかく傷物令嬢になったのに、顔が天才な俺様王太子が絶対、私を諦めない!─


傷物令嬢としてぼっちハブされているアンがさっと周りを見渡せば、今日は透明魔法を使っていないのに、透明扱いされた。


(誰とも目が合わない!)


どうしたものかと思っていると、アンの後ろから花が咲くような可憐な声がかかった。


「あの、アン様……もしよろしければ、私と組んでもらえませんか?」

「へ、ヘレナ、嬢?!い、いいの?」


傷物令嬢、つまりはみ出し者のアンがヘレナに近づけば、ヘレナに余計な害があるかもしれない。


アンは出歯亀はするが、自分から正ヒロインに近づくのは自粛していた。推しは基本的に眺めるものだ。


「アン様のお邪魔でなければ……」


不安そうに小首を傾げて上目遣いする天然人たらしヘレナの可愛いおねだりキュンに、アンは簡単に射抜かれた。


「あの、私、アン様とお友だちになりたくて」


おねだり顔からの二の矢、三の矢で口説き文句に即落ちのアンは、思わずヘレナを抱き締めてしまった。

オタクは好意を向けられると突如として距離感を間違えることが多々ある。


「いいの?!本当にいいの?!私もそう思ってたの両想いね!」


近づいて来られては袖になどできない。


だって可愛い!
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