澄ましたメイドのご主人様。

なんちゃってメイドとイケメンのご主人様。

「あれ,メイドさんだ。ヴィクトリアスタイル」



部家の左奥。

私が仕事でお付き合いすることになる茉悧様は,そのベッドの上にいた。

儚くも見える,綺麗な顔立ち。

立てた片足に頬杖をついて,にこりと私を見ている。

……かっこいい。

甘く明るい茶色の瞳に,暗い茶色がかった髪。



「初めまして,茉悧様。茉悧様と仲良くなることを目的にバイトとして雇われました,五十嵐花蓮と申します。掃除や片付け,炊事なども行いますが,住み込みではないので,なんちゃってメイドとなります」



この制服を気にされたので,一応訂正を入れておいた。

完璧な角度で頭を下げ,反応を待つ。



「……ああ,君が。お隣さんだよね? 五十嵐花蓮ちゃん」

「はい」



茉悧様の方にも話は通っているのだと,私は安心した。

顔をあげ,姿勢を正す。

話が早いのは私にとってとても助かるのだ。

嫌だと威嚇されたらどうしようなんて,ドアを開ける前は思っていたから。



「じゃあ……おいで? そこにいたって分からないから」
< 22 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop