麗矢様のナイショの溺愛

「……あ」


 ふと、麗矢様が声をこぼした。


 麗矢様は睨むように、庭を見ている。


 視線の先が気になって、私も庭を見た。


 木野さんが、脚立に乗って枝の剪定をしている。


「あの男、結局何者?」
「庭師だそうですよ」
「……ふーん」


 麗矢様は興味あるようで、ないような返事をした。


 そういえば、麗矢様が独占欲を見せてきたとき、木野さんに話しかけられた気がする。


 あのときの麗矢様は、そのことを言っていたのかもしれない。


「……響、ああいう爽やかそうなのがタイプ?」
「は?」


 私の気持ちを疑ってのことだろうか。


 感情がわかりにくいとよく言われるけど、さすがにこれは傷つく。


「……だって、アイツに笑顔見せてたから」


 麗矢様は不貞腐れている。


 なるほど。


「庭に秋桜が咲いたと、教えてもらっただけですよ。私、秋桜が一番好きな花なので、見れるのが嬉しくて」


 あのときの会話を教えると、麗矢様はゆっくりと、私に背を向けた。


 なんて、愛おしいのだろう。


「私は、レイが好きだよ」


 麗矢様の耳元で囁いて、あとはかっこよく去りたかった。


 麗矢様は私の手を掴んで引き止めると、私を振り向かせる。


 静かに、唇が重なった。


「……今のは、響が悪い」


 きっと、お互いに頬を紅く染めていることだろう。


「……今日、仕事にならなくて怒られたら、麗矢様のせいですからね」


 甘い空気感に耐えられなくて、悪態をついてしまった。


「俺だけ? 響が可愛いのが悪いんだって」


 なにを言っているのだろうと、私たちは笑いあった。



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