だって、しょうがない

19

◇ ◇ ◇

「ねえ、美穂にあげるの、ブカラとティファミーどっちがいいと思う?」

「んー、ワイングラスとタンブラーのどっちにするのかも迷うよね。由香里はどっちがいいと思う?」

 ホテルに泊まった翌日。愛理は、由香里と佐久良と三人で、美穂の婚約祝いを選びにデパートの洋食器売り場へ来ている。
 大学時代からの付き合いのあるメンバーだけど、友人というより、悪縁と言った方が正しいのかもしれない。つい、そんなことを考えてしまう。

「うーん。迷うよね。タンブラーは、普段使いで使えるから便利かな。でも、お祝いだからなぁ」

「ワイングラスの方が、特別感があっていいかもね」

 照明の明かりも手伝って、グラスは宝石のように煌めいている。その中でも一際美しく見えるブカラのワイングラスを愛理は選んだ。

 きっと、幸せな瞬間にグラスを合わせたら、美しい音を奏でるのだろう。このワイングラスで飲む、ワインはどんな味になるのか……。
もしかしたら、特別な味になるのかもしれない。

「わー、キレイ。これでいいんじゃない?」

 佐久良も気に入ったようで、めずらしく愛理の提案を否定しない。
 納得とばかりに頷いた由香里が、店員さんを呼ぶ。

「じゃ、これにしよう。すみません。これ、ギフト包装で持ち帰ります」

「あー、いいなぁ。御曹司と結婚か」

 佐久良がぽそりと呟く。

「結婚が良い事ばかりとは、限らないよ。それに御曹司とか親戚付き合いが大変そう」

 愛理の言葉に、佐久良は面白いものでも見つけたかのように、目を細める。

「ふふっ、愛理も親戚付き合いで苦労しているんだ。それとも結婚生活かな? まあ、確かに親戚とか気を使いそう」

 相変わらず、一言多い佐久良に、愛理は面倒くさいとばかりに細く息を吐き出した。淳に仕事を依頼してまで近づいたのに、袖にされたことも面白くないのだろう。淳を引き取ってくれるのなら、熨斗をつけて差し出したいぐらいだ。


 


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