だって、しょうがない

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 福岡空港から直結されている地下鉄に乗り、わずか5分で福岡の中心地、博多駅に到着。早めに上がらせてもらったとはいえ、仕事を終えてから移動の(せわ)しなさに愛理はふぅっと息を吐いた。
けれど、重たい気持ちで自宅にいるよりずっといい。

 カラカラとキャスターバッグを引きながら、地元の銘菓を扱っている土産物屋さんを横目に、地下街に入ると店舗のディスプレイが華やかに出迎えてくれる。初めて来た博多の街なのに、どこか温かくて懐かしい雰囲気に、心がほころんでいくように感じられた。

『半個室のスペースで、ゆったりと癒されてみませんか?』

 ホテルへ行く途中にあったヘアサロンの看板が目についた。
 知らない土地に来て、気持ちが浮かれているのか、癒やしを求めているのか、サロンの看板の謳い文句に引き寄せられ、つい、立ち止まる。

 ウインドガラスに映った自分の姿。肩より長い黒髪が、やけに野暮ったく見えた。時計を見ると17時を過ぎたばかり、とはいえ、これからヘアカットをするのには、遅いような気がした。ましてや、予約もしていない飛び込みの客なんてお店に迷惑だ。
 
 愛理は、キャスターバッグを握り直し、ホテルへ足を向けようとした。
その時、店のドアが開き、アッシュグレーの髪が印象的な背の高い男性が顔を出す。
 彫りの深い整った顔立ちに、白いシャツに黒いパンツというシンプルなファッションが良く似合い、まるで雑誌に出てくるモデルのようだ。
その男性の型の良い唇が動く。

「ヘアカットでお悩みですか? 良かったらキャンセルが出て、空いていますので、寄って行きませんか?」
 

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