願わくば、再びあなた様と熱い口づけを。


「姐さん。血が……血がとまらないんです」


出産に立ち会った禿が大粒の涙を流しながら私の手を握りしめてきます。

それを握り返す力もなく、私は荒い呼吸の中天井を見つめました。


「……十五」

「え」

「この子の名前は十五。満月のように、いつか誰かの心を満たせる子に……」

「……姐さん? 姐さんっ!!!」


もう、視界には何も映りませんでした。

堕ちていく意識の中、私は最後にいとしいあの方を思い浮かべます。

結局、愛してると言いながら私はひとり、月を見ておりました。

甘いささやきの結末をずっと見てきて、わかっていたというのに私は沼にハマってしまったのです。




「……お菊っ! お菊っ!!!」



月が魅せる幻惑に酔い、私は目を閉じます。



あぁ、いつか……。


私たちが何の障害もなく愛し合えることを。




そんな時代、ありえるはずがありませんね。






この苦界。

弱音を吐いたら生きられなくなる世界なのです。


私は溺れたのです。

これがその結末。



熱い口づけは、息を止めるものでした。




十五の夜、月に魅せられ私はゆきます。

再び会えることが出来るならば、どうか息をつけるくらいに甘さをくださいね。




【⠀菊月編⠀】 終
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