願わくば、再びあなた様と熱い口づけを。
「お前を……身請けしたい」
息が止まるかと思いました。
あくまでまっすぐに想いをぶつけてくる景治 様から目を逸らすことが出来ず、私は目を見開いて固まりました。
それを見て景治 様はこれまで見たことのないほどにやわらかく優しい眼差しで私を見つめてくるのでした。
「親は説得する。だから少しの間待ってほしい。お菊、お前がほしい」
なんてずるいお人。
そんな風に言われて断れる女なんていやしません。
私はこの人を受け入れたい。
私のすべてを捧げたい。
はじめてそう思えた人。
何よりもいとしい私のただ一人の男。
この欠けた月が満たされていく。
私もまた彼の欠けた部分を満たしていきたいと願った。
「……はい。お待ちしております。……景治 様をお慕いしております」
これが最初で最後の恋になるだろう。
私が面を外し、いつか心から笑えるようになったとき、隣にいるのは景治 様であってほしいと、そう心から願うのでした。
それから私たちは何度か逢瀬を繰り返しました。
苦しい痛みはあったが、それ以上に私は満たされていく想いを知りました。
ですがいつまでも私たちの逢瀬は続くことはありませんでした。
異様な吐気やふらつきが私の身体を支配したのです。
あまりにもおかしいことに気づき、療養を兼ねて私は見世からしばらく離れることとなりました。
そこでわかったのが、妊娠しているということでした。
楼主からは下ろせと言われましたが、必死に抵抗し、私は赤子を生む決意をいたしました。
景治 様に告げることも出来ずに去った私は、一人空を見上げ、そこに浮かぶ月をみて景治 様を思い浮かべました。
その直後、陣痛がはじまり私は赤子を産みました。
輝かしい満月のような美しい男の子でした。
霞む視界の中、そのお顔がどことなくいとしいお方に似ているような気がして私は涙を流すのでした。