携帯電話、彼との距離

うるさっ……。
あまりのうるささに、私は思わず両手で耳をふさぐ。


あーあ、私の自己紹介やりにくいじゃん……。まぁいいけどさぁ。
海め、このためにさっきスカート1回折って短くしてたのかっ!

私はガヤガヤとうるさい教室に向き直る。
標準より3cm長くつくったスカートと、眼鏡、三つ編みをさっと直して、息を吸う。

『同じく、都立三水難中学校から来た、神崎天鈴です。天の鈴で、あまねと読みます』

一瞬でガヤガヤの静まった教室。
ここの人たちは育ちがいい人が多いのかな?こうも私の話まで聞いてくれるとは思わなかった。

『得意教科は理科と数学。苦手教科は体育。いじめないでくださいね、運動神経鈍いんで』
やった、ノンブレスで言い切った。



私は前に立つ海を置き去りにして、空いている席に座る。
すると、SHR中とは思えない重い空気が、ねっとりと私に絡みついた。

(は?何?あの地味女)
(愛想の一つもまかねぇじゃねぇかよ、なのにあの女の子より先によく席につけるな)

ひそひそとした声が教室の中からちらほら上がる。
うーん、前言撤回。育ちのよろしくない方もいらっしゃるみたいね。

< 15 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop