【番外編】花火大会の記憶 ー星空の下、キミとの約束。
「…っ、ごめん…、ごめん、ありがとう…っ」


菜摘から離れた途端、さらに溢れだし止まらなくなった涙。

膝に手をつき顔を隠す私から、恭弥は分かりやすく目をそらした。


見てほしくない。

強がりな私を分かりきった幼馴染の行動に、少し可笑しくなる。


だけど、それと同時にまた、涙があふれてきて、私は、止めようと必死で深呼吸を繰り返した。


「菜摘が、大翔の思い出を口にしたの、初めてで。」

「うん」


恭弥は、少しだけ顔を歪め、空を見上げた。

私達は、生前の大翔から、病室の屋上で花火をした日の思い出を聞いていた。


菜摘が語った思い出は、

あんなに愛しそうな顔をして語ったのは、

大翔との思い出なんだ。
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