血の味のする恋を知る
いつものようにただただ頭を下げて目を伏せて吐き出される毒のような言葉を受け止める。そうして嵐が過ぎ去るのを耐えていると何故か部屋に案内しろと言われた。
兄は普段わたしの部屋になっているところは物置のようだからと嫌厭して近づこうともしないのに一体どういうつもりなのか。疑問には思ったがわたしの言葉が彼らに届くはずもなく淡々と自分の部屋まで足を進める。
そして部屋の中まで案内すればまるで汚いだの家畜小屋のようだとげらげら笑いながら物色する彼らに冷めた視線を床に落とす。私物は少ないが部隊から引き取ったわずかなものすら金目のものだと思えばその懐にしまっているのだからどちらの方が卑しいのか。
自身の領域だと思っていたところですら彼らにとってはずかずかと簡単に踏み荒らせる場所なのだと思えば本当にわたしは塵芥と同じ存在なのだと実感した。
そしてあちこち荒らされた部屋を見てようやく帰るのかと僅かに体に入っていた力が緩むとそれを見計らったように両腕を乱暴に掴まれた。
そのまま引き倒されて受け身も取れずに床に背中をぶつけた衝撃で一瞬息が止まる。頭も強く打ったせいか意識が混濁して何が起こったのか直ぐには理解できなかった。
水の中から聞こえているような下卑た笑い声と霞む視界の中鈍く光る刃、ビリビリと布を裂く音と直接肌に触れるひんやりとした空気、そして無遠慮に体を弄る生ぬるい手。
反射的に拘束された腕を振り払おうと力を入れたが強い力で抵抗されて、その上次の瞬間には両手に激痛が走った。こういう時に大声を出せば魔物の恰好の餌になると訓練の中で骨身に染みているので必死に歯を食いしばった。
首を動かして確認すると上に向いている手のひらには床に縫い付けるように小剣が刺さっている。鼻に付くのは嗅ぎ慣れた鉄錆のような臭いだ。
…………どうしてこんなことを、なんて言うのは愚問なのだろう。