血の味のする恋を知る
◇◇◇
ありとあらゆるところからの刺激に覚醒を促される。手もお腹も、言うのも憚られるようなところも、挙げればキリのないほどに体のあちこちが痛みを訴えている。
部屋の中は真っ暗であれからかなり時間が経ってもう夜中なのだと窓から見える双子月が教えてくれた。
ぼんやりとしたままのろのろと体を起こす。最早服とは言えない布の残骸が肌を伝う。ふと手のひらを見れば傷は塞がっていて床には刃物の跡とべっとりと残っている血が残っていることがあれが現実なのだと証明していた。
………………汚い。わたしも、あいつらも。
涙はとうに枯れ果てた。意識を失う前にあった何かもどこかに消えてしまった。
ただただ、そこにあるのはがらんどうなわたし。
どれぐらいそのままでいたのかはわからないけれど不意に違和感を覚えて顔を上げる。
………静かすぎる。
今日…昨日かもしれないがお茶会には結構な数の親族がここに招かれていた。そういう時は多くが夜も晩餐を頂いて何泊かしてから帰る。それにしては屋敷が静かすぎる。
もしかして何日も意識を失っていたのかと思うも体の傷の治り具合を見ればそれはないと思い直す。慎重に気配を探ってみるけれどやっぱりおかしい。
だからと言っていつもならばわたしには関係ないことだと無視を決め込んでいたけれど、なぜか体はふらふらと立ち上がって廊下に続く扉に手をかけていた。
どこか予感めいた雫が、胸の奥にひたりと落ちる。