血の味のする恋を知る
まるで引き寄せられるかのように足が食堂に向かう。探ってみるとそこにだけ気配が固まっていたのだ。途中で自分の惨状を思い返すがまぁいいかとボロボロのまま素足でひんやりとした廊下を歩いた。
自分でも思考が鈍くなっているのを自覚するがどうしてもそれに危機感を覚えることができない。自棄になっているのだろうか……それもいいだろう。わたしがどうなったところで気にする人間なんていない。
近づくにつれて慣れ親しんだ臭いと空気が肌を撫でる。どうしてここで、この屋敷でそんなものを感じるのだろうと未だに鈍く動く頭で考えながら食堂前の扉に着いた。
扉の向こうから微かな音と何人か見知った気配がする。そして誤魔化しきれないほどに濃密な血臭も。
どくん、どくんと自分の心臓の音がやけに大きく耳に届く。
微かに震えている指先を視界に映しながらゆっくりと手を伸ばしてわたしは食堂の扉を開いた。
びちゃり。
「……、ぁ、……………?」
ぐちゅり。ずる、びちゃ。ぐちゃり。
大きな窓から月明かりが食堂を照らす。そこに広がる光景は目に鮮やかな程に真っ赤に染まっていた。