離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
「あのこの部屋にいた小比賀玲司は、どこに移動しましたか?」

「あぁ、小比賀さんなら――」

「私から説明しますから」

 看護師さんの言葉を遮ったのは、秘書の尾崎さんだった。

 看護師さんは会釈をすると、その場を去って行った。

 私は尾崎さんを目の前にして、体が強張った。彼にいい印象がないから仕方ない。警戒心を隠せずに、彼と向き合う。

「今後玲司様の治療は、私共北山が責任を持ちますので、お引き取りください」

「それはどういうことですか? 私は玲司の妻です」

 家族なのに、彼を放っておけと言っている。到底納得なんてできない。

「妻とおっしゃいますけど、いったい今のあなたになにができるって言うんですか?」

 言い返したいけれど、言葉がでない。たしかに言う通りだから。

 明るく前向きに彼を支える。そう決めたけれどそれがどれほど彼の役に立つのかわからない。むしろ私の空回りにすぎない。

 自分でも不安に思っていたところを言われて、言い返せない。

「なにもできなくても、妻ですから。彼の病室を教えてください」

 そんなことしか言い返せなくて情けない。

「玲司様はもうこの病院にはいません。北山の関連病院に転院しました」

「えっ? そんな急に? 私そんな話聞いていません」

 私は想像もしなかったことに、言葉が続かない。

 私に連絡なく転院だなんて、どうしてそんな話になったのだろうか。

「あなたの許可など必要ないですから」

「そんなはずないです」

 普通そういう状況であれば、家族の許可がいるはずだ。

「それができてしまうのが、北山なのですよ」

 北山グループの力の大きさをあらためて思い知った。

「せめて、病院の場所だけでも教えてください」

 私は尾崎さんに縋りつく。みっともなくてもなんでも、玲司の居場所を知るには彼に頼るしかないのだ。

「それはお教えできません。お引き取りください。ここで騒がれたらほかの患者さんの迷惑にもなりますから」

 それを言われてしまうと、強く出られない。

 ギュッと手を握って悔しさに耐えた。

 私がなにも言い返さないのを見て、尾崎さんはその場からいなくなってしまった。

 近くのベンチに座って泣きそうになるのを我慢した。深呼吸を繰り返し心を落ち着ける。

 このままでは玲司に会えなくなってしまう。なにかいい案がないのか、考えながら病院の外に出た。

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