離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
そうだ、お義母さんなら玲司の転院先の病院を知っているかもしれない。私は期待を込めて通話ボタンをタップした。
「お義母さん、あの玲司さんのことなんですけど」
慌てていた私は、いただいた電話にもかかわらずに、自分の要件を伝えはじめた。失礼なことだと理解しているが、そんなことを気にしている余裕が私にはなかったのだ。
『琴葉さん。そのことなんだけれど、今からちょっと出てこられるかしら?』
そう言ってお義母さんに言われるまま、指定されたホテルに向かう。
そう言えば義母の滞在先まで、玲司のことで頭がいっぱいで気が回らなかった。私はどれだけ至らない嫁なのかと嘆く。
先ほどいた場所から三駅離れた場所で、到着までにそう時間はかからなかった。ラウンジなどで話をするわけでなく呼び出されたのは客室だった。そこに滞在しているものだと思い込んだ私は、身構えもせずに呼び鈴を押した。
『はい』
「琴葉です」
中からお義母さんの声が聞こえた。名乗るとすぐに向こうから鍵の開いた音がする。
「琴葉さん、わざわざごめんなさいね」
「いいえ。あの、それで玲司さんのことなんですが」
私が話を切り出したとき、部屋の中で人の気配があって驚く。てっきりお義母さんひとりがこの部屋にいるのだと思い込んでいた。
そしてそこにいる人を見て、私は声を失った。
――尾崎さん。
なぜ彼がここにいるのだろうと疑問に思う。彼が仕事をこなしているだけだとしても、私にとっては悪い印象しかないので体が強張った。
「中に入って、話をしましょう」
私はお義母さんに促されて、警戒しながら部屋の中に入る。ソファを勧められ座ると尾崎さんがお茶を用意しはじめた。
そのことに違和感を抱く。
お義母さんは私の味方をしてくれるはずだ。それなのになぜ彼がお茶を淹れるなど世話をするのだろう。
こんなのまるで、私だけがよそ者みたいじゃないの。
言いようのない不安に襲われる。しかしここで帰るわけにはいかない。
私が玲司とのつながりを持つためには、どうしてもお義母さんの協力が必要だから。
「ごめんなさいね。こんなところまで呼び出してしまって」
「いえ、かまいません。でもどうして――」