離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
 そう言いなが差し出したのは、先ほどカフェで買ったコーヒーだ。

「ありがとう。でも頑張ったのは君塚くんだからな」

 そう言うけれど、君塚の話では玲司の力が大きかったと言っていた。そんなところも彼らしい。

「あぁ、懐かしいな。ここのコーヒーよくふたりで飲んだな」

 彼もまた昔の思い出として覚えていたようだ。

「好みが変わってなくてよかったです」

 私が知っている頃の彼とは立場が違う。食の好みも変わっているかもしれないと思いつつ、結局昔よく頼んでいたものを選んだ。

「俺の好きなもの、覚えていてくれてうれしいよ」

 実際そうなのだけれど、指摘されるとなんだか恥ずかしい。

「どこにでもあるチェーン店のカフェですし、たまたま選んだだけです」

「そういうことにしておくか」

 彼は笑いながら、コーヒーを飲んでいる。少しはリラックスできただろうか。思わず様子をうかがってしまう。

「久しぶりにすごくうまいコーヒーだ」

 柔らかく笑う彼を見て、迷ったけれどやっぱり買ってよかったと思った。あまり関わらないようにしているけれど、それでも今日みたいな日は、ちゃんとおめでとうと言いたい。

 やっぱり彼の笑顔を見るのが、私は好きなのだ。

 しかしゆっくり話をしている時間はない。たしか玲司はこのあと北山グループでの仕事があると聞いている。

「では、いくつか確認したいことがあるのでよろしいでしょうか?」

 手に持っていたタブレットを立ち上げて、仕事を進める。

「ここだけ気になるから、注意しておいて。しかしよく気がついたな」

「もう四年この会社で働いているので、褒められるようなことではないですよ」

 私がやっている仕事は、言ってしまえば誰にでもできる仕事だ。だからこそ慣れと効率が大事になってくる。

「いや、その気遣いがみんなを支えてるんだろ。これからも頼むな」

「はい……ありがとうございます」

 彼とは会社は一緒だったが、こんな形で一緒に働くのは考えてみればはじめてのことだった。

 できる人のそばで仕事をするのは、本当に勉強になる。

 中野社長からもまた学ぶことが多かったが、社長が交代してまた社内が活気づいてきた。

「あとこれは俺の個人的な意見だけど、琴葉と働くのは楽しいよ」

 ふいにそんなことを言われて、どう答えていいのか咄嗟に思いつかない。

「あの、えーっと。失礼します」
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