離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
結局逃げるようにして社長室から出た。廊下を歩いていて気づく。
「〝琴葉〟じゃなくて〝鳴滝〟なのに」
自分でもつまらないことに、こだわっていると思う。でもそれが私の中でけじめのようなものになりつつあった。
オフィスに戻り、席を外していた間に新たに増えたファイルやら資料を横に避けつつ作業できるスペースを確保する。
フリーアドレスなので、なんとか今日中に仕事を片付けないとこのまま放置して帰るわけにはいかない。
カットソーを腕まくりして早速作業に取り掛かる。
しかしやりはじめてすぐに隣には春香がやってきた。片付けたばかりのデスクの上にチョコレートをふたつ置いた。
「え、これ。どこで買ったの? 朝、コンビニで探したけどなかったの」
「見つけたときに、琴葉は絶対に喜ぶと思った」
春香はちょっと誇らしげに胸を張った。さすが四年の付き合いともなると、私がコンビニの新作に目がないのを知っている。
「え~うれしい。ありがとう」
「いいえ、いいえ、どういたしまして。その代わり……ちょっとこれ、手伝ってくれない?」
ノートパソコンの画面にはたくさんの数字が並んでいる。たしかに春香は苦手な作業だ。
「わかった。それ一度サーバに保存して。私が引き受けるわ」
「ありがとう、やっぱり琴葉は最高! じゃあ代わりに私はこっちをもらっていくね」
春香は私の苦手な分野の仕事をさっと引き取ってくれた。やっぱり持つべきものは互いを理解する同期だ。
私の隣に座ったまま、仕事をはじめる。
「なんだか北山社長に交代してから、仕事のスピードが加速したね」
春香の言葉をどうとっていいのか、わからなかった私は真意を尋ねた。
「それは春香にとって、大変になったってこと?」
「もちろんそれはそうだけど、気持ちはものすごく前向きなんだよね。今からどんなふうに変わっていくのか、わくわくする」
「それはわかるような気がする」
中野社長のときだって、仕事は大変だったけど楽しかった。けれど今のような高揚感をもって仕事をしていたわけじゃない。
「京急建設の仕事が軌道に乗れば、北山グループ内でうちの会社を使うのを渋っている人たちを黙らせるには十分よね。そうすればうちの会社の価値を認めさせることができる。北山グループの傘下に入るとしても価値のない会社だなんて言わせたくないもの」
「〝琴葉〟じゃなくて〝鳴滝〟なのに」
自分でもつまらないことに、こだわっていると思う。でもそれが私の中でけじめのようなものになりつつあった。
オフィスに戻り、席を外していた間に新たに増えたファイルやら資料を横に避けつつ作業できるスペースを確保する。
フリーアドレスなので、なんとか今日中に仕事を片付けないとこのまま放置して帰るわけにはいかない。
カットソーを腕まくりして早速作業に取り掛かる。
しかしやりはじめてすぐに隣には春香がやってきた。片付けたばかりのデスクの上にチョコレートをふたつ置いた。
「え、これ。どこで買ったの? 朝、コンビニで探したけどなかったの」
「見つけたときに、琴葉は絶対に喜ぶと思った」
春香はちょっと誇らしげに胸を張った。さすが四年の付き合いともなると、私がコンビニの新作に目がないのを知っている。
「え~うれしい。ありがとう」
「いいえ、いいえ、どういたしまして。その代わり……ちょっとこれ、手伝ってくれない?」
ノートパソコンの画面にはたくさんの数字が並んでいる。たしかに春香は苦手な作業だ。
「わかった。それ一度サーバに保存して。私が引き受けるわ」
「ありがとう、やっぱり琴葉は最高! じゃあ代わりに私はこっちをもらっていくね」
春香は私の苦手な分野の仕事をさっと引き取ってくれた。やっぱり持つべきものは互いを理解する同期だ。
私の隣に座ったまま、仕事をはじめる。
「なんだか北山社長に交代してから、仕事のスピードが加速したね」
春香の言葉をどうとっていいのか、わからなかった私は真意を尋ねた。
「それは春香にとって、大変になったってこと?」
「もちろんそれはそうだけど、気持ちはものすごく前向きなんだよね。今からどんなふうに変わっていくのか、わくわくする」
「それはわかるような気がする」
中野社長のときだって、仕事は大変だったけど楽しかった。けれど今のような高揚感をもって仕事をしていたわけじゃない。
「京急建設の仕事が軌道に乗れば、北山グループ内でうちの会社を使うのを渋っている人たちを黙らせるには十分よね。そうすればうちの会社の価値を認めさせることができる。北山グループの傘下に入るとしても価値のない会社だなんて言わせたくないもの」