離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
 仕事とはいえ、オフィス以外の場所で彼と一緒に過ごすことになり、多少なりとも意識してしまう。
 
 場所は会社から車で三十分ほどかかる料亭だった。

 今回はこちらが接待をする側なので場所選びに苦労していたのだけれど、玲司が電話一本入れると店が決まった。

 やはりこういうときには、北山の名前がものをいうのだと実感する。

 そういえば彼と再会してから三カ月ほど経った。嵐のように瞬く間に過ぎていったけれど、おおむねうまくやっている。

 彼が北山で過ごした四年間がどういったものだったのか知る由もない。

 つらい手術に耐えたあとも、きついリハビリをして以前のように動けるようになったに違いない。

 それに加えて北山の後継ぎとしても、色々な困難があったのではないかと想像する。今となっては彼は立派な後継者と認められているだろうが、あのグループのトップに立つためにやらなくてはいけないことがたくさんあっただろう。

 彼の存在自体をよく思わない人もいたに違いない。

 けれどそんな中でも彼は、しっかりと実績をだして今ここにいる。

 どれほどの努力と苦労を重ねたのだろうか、想像することすら難しい。

 そんな彼だったが、以前の彼の持っていた温かい優しさは今でも健在だ。立場に関係なく丁寧で、偉ぶったところが全然ない。

 しかし上に立つものとしての役割はきちんとわかっている。

 本当に私の知らないこの四年間で、ますます男ぶりを上げたように思う。

「琴葉、そろそろ着くよ」

「はい」

 ぼうっと考え事をしていたのがばれたのか、彼が顔を覗き込んでいた。ずっと頭の中で考えていた相手にそんなことをされるとドキッとしてしまう。

 気合を入れ直して取引先の社長と待ち合わせをしている料亭に足を踏み入れた。

 数寄屋門をくぐり中に入る。飛び石の上を歩きながら手入れされた庭を見ていると、苔をまとった石灯籠や手水鉢があり趣を感じた。

 都内なので気温は変わらないはずなのに、少し涼しく感じる。

「中はこんなに広いんですね、知らなかった」

 政治家や経済界でも有名な方が使うお店だ。今まで接待をすることがあっても、ここまで立派なお店を利用したことがない。

「連絡をしたら、たまたま予約できたからよかったよ」
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