離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
「大丈夫か。なにをされた? 警察を呼ぶか?」

「いえ、あの。少し触られただけで、ケガもしていませんのでその必要はありません」

 たしかに嫌な思いをしたが、このくらいで警察を呼んでは、迷惑をかけてしまう。

「こわかっただろ、無事でよかった」

 そう言った次の瞬間、玲司は私を抱きしめた。

 強く抱きしめられて、驚いて固まってしまった。それと同時に恐怖から解放されホッとして力が抜ける。

「おい。本当に大丈夫なのか?」

「はい、気が抜けちゃって」

 なんとか笑いを浮かべたが、玲司は眉根を寄せた。

「無理しなくていい」

 そう言われて私は彼に完全に身を任せた。

 懐かしい体温に胸が高鳴る。彼の香水が昔と変わっていなくて、それもまた私の胸をドキドキさせる。

「香水変わってない」

 気が緩んでいたせいか、思っていたことが口からぽろっと漏れた。

「琴葉が好きだって言った香水だ」

 あぁ、そうだった。いつか私がそう言った気がする。

 そんな昔のことを覚えていて、今も変わらずに同じ香水を使っている彼。私のことを四年間忘れていなかったと言われているようで、うれしくなってしまう。

 そのうえ、岸岡社長から私を守ってくれた。

 私たちがつき合うようになったのも、私がお客様からの誘いを断りきれずにいたのを助けてくれたのがきっかけだった。

 昔も今も変わらず私を守ってくれる。胸の甘やかなうずきをどうやって我慢したらいいのか。

「助けてくれてありがとうございました。我慢すればできたかもしれないのに」

「我慢なんかするべきじゃない。ああいうやつらには毅然とした対応をしなくちゃいけない」

 彼の言う通り私が我慢することで〝そういう扱いをしてもいい〟と思われて、同じ被害を受ける子も出てくるかもしれない。

 だが今日だけが我慢したかった。

「でも玲司が頑張って、色々我慢していたのに」

 本来ならばあんな馬鹿にされていい人間じゃない。たしかに北山家の一員だけれど、事故で脚に大けがを負いそれを克服し、跡継ぎとして大変な思いで今の地位にいる。

 それをなにも知らない人に「北山のおぼっちゃん」だなんて言われたくない。

 その努力は誰にも踏みにじられたくない。

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