離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
「あぁ、そうだな。顧客の都合とかもあってゆっくり食べられる日のほうが少ない気がする」

「君塚が営業だもんね。その点では私は恵まれているかも」

 ものすごく忙しいときは、仕事をしながら昼食をとる場合もあるけれど。本当にまれな話だ。

「でもまぁ、俺内勤向いてないからなぁ」

「たしかにそうかも。いまだに書類ミスだらけだもんね」

「おい。そこは『そんなことないよ』って言うところだろ」

 お互いに噴き出して笑い合った。

 君塚は同期と言うこともあるが、一緒にいて疲れない。冗談や軽口をたたいてもお互い許される関係だ。男友達ってきっとこんな感じなんだろうなって思う。

 実際今日だって、映画もランチも十分に楽しい。普段ここまでふたりでゆっくり過ごすことはないが、やっぱり話題が豊富な君塚との会話は楽しい。

 ふとバッグの中でスマートフォンが鳴っているのに気がついた。画面を確認すると玲司の名前が表示されている。

「社長からだ。ちょっとごめんね」

 休みの日に連絡があるなんてめずらしい。私は断りを入れてから通話ボタンをタップした。

「もしもし、鳴滝です」

『休みの日にすまない。今大丈夫か?』

「はい。少しなら」

 申し訳なさそうな声が聞こえる。どうやら今日中に片付けておきたい仕事があるようだが、そのデータが見つからないと言っている。

「それなら。営業課ではなくて業務課のサーバのデータを確認したほうがわかりやすいと思います」

 私がファイル名と保存場所を伝えると、すぐにお目当てのデータを見つけた彼は『ありがとう』と言って電話を切る。

「大丈夫なのか?」

 心配そうな顔で君塚が覗き込んできた。

「たぶん平気だと思うけど」

 そこで色々と思い出した。ほかのデータも必要だったかもしれない。玲司なら気がついてそこにたどりつくかもしれないけれどちょっと心配だ。

 しかも担当者が独自のフォーマットを利用しているので、混乱するかもしれない。

「ちょっと、心配だから私会社に行ってこようかな」

 ちょうどごはんも食べ終わったところだ。念のため顔を出して、問題なければ帰ればいい。都合のいいことにここは会社からそう遠くもない。

「なんでお前が行く必要があるんや?」

「でも困ってるかもしれないから。そうでなくても私が行ったほうが早く解決できるだろうし」
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