離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る
 今日中にやっておきたいと言っていた。手伝えば少し負担が軽くなるかもしれない。

「休みなんやから、頼まれてないのに行かんでいいやろ?」

「それはそうだけど」

 不機嫌そうな君塚の顔に違和感を覚える。

「琴葉、なんでそんな社長のことになったら必死になるんや?」

「え。そんなことないよ」

 すぐに否定したけれど、納得していないようだ。それもそうだ、私自身玲司を意識してしまっている。それがいつも近くにいる君塚に伝わっているのだろう。

「お前、社長のこと好きなんか?」

 真剣に聞かれて一瞬言葉を失った。いつものふざけてからかっているような雰囲気はみじんもなく、彼が本気で聞いているのがわかる。

 私の態度、そんなにわかりやすかったのかな。もしかしたら、春香やほかの同僚にもばれているのかもしれない。

 だけどそれを認めるわけにはいかない。許されない思いだから。

「そ、そんなことないよ。もちろん尊敬はしてるけど。春香とかのほうがよっぽど社長見てキャーキャー言ってるじゃない。知らないの?」

 勝手に名前出してごめんと、春香に心の中で謝っておく。

「ここまできてごまかさんといてくれ。俺はずっと琴葉のこと近くで見てきたからわかるんや」

 たしかに同期だし近くにいた。でも私のその考えを、君塚が否定する。

「なぁ、琴葉。お前もうそろそろ俺のこと男として見てもええ頃ちゃう?」

「えぇ?」

 それって、それって……。

 突然のことに驚いて、言葉が出てこずに口をパクパクとさせた。

「やっぱり、まったく気がついてなかったんやな」

 呆れたような彼の様子に、もしかして今までも何度かそういう雰囲気を出していたのかと今さら気がつく。

「そ、そんなの、わかるわけないじゃない!」

「なんでや、俺はずっとお前が好きやってアピールしてきた」

 そ、そんなストレートに言わないで。恥ずかしくて耳の先が熱い。

「なにかの間違いよ。きっと」

「なんやそれ、なんでお前に俺の気持ちが間違いやなんて言われなあかんのや」

 それはそうだ。彼の気持ちを私が否定するのは間違っている。分かっているけれどどうしもて驚いて冷静に考えられない。

「わ、私、やっぱり帰るから」

 バッグから財布とを取り出し、テーブルの上にお金を置いた。

「琴葉」
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