離婚したはずが、辣腕御曹司は揺るぎない愛でもう一度娶る

　隠し事が下手な自覚はある。だからといってここで「あなたのことが気になるから」なんて口が裂けても言えない。

「社長とは昔のことをほかの社員に知られるとまずいので、距離をとっておきたいんです」

「なぜ、みんなに知られるとダメなんだ？」

　どうしてわかってくれないのだろうか。私たちの過去は公にすべてきではないということを。妙な勘繰りや憶測を生んでしまう。それを避けたいだけなのに。

「みんなが変に意識するじゃないですか。大切な仲間に気まずい思いをさせたくないんです」

　これは本音だ。知らなければ普通に接することはができるが、知ってしまえばぎくしゃくしてしまうだろう。

「そうだろうか。俺としては、さっさと〝元〟を取ってしまって夫婦に戻りたいんだが」

「……なんでそんなことを」

「琴葉が忘れられない。今でも君が好きだ」

　昔と変わらない愛の言葉に、鼻がツンとして目頭が熱くなった。ダメだ、泣いてしまう。

　彼のストレートな言葉は、私が必死になって隠している恋心を容赦なく引きずり出してきた。

　また彼からそんな気持ちをもらえるなんて、四年前のあの日には想像すらできなかったのに。

　何度も夢に見てきた。その都度苦しくなるだけだった。だからいつしか心の中に自分の気持ちを閉じ込めるのがうまくなっていた。

　それなのに……こんなにすぐに揺さぶられてしまう。

　私は慌てて歯を食いしばり、なんとか涙を耐えた。

　今までそんな雰囲気を出してはいたものの、ここまではっきりと言われてはいなかった。

　不意打ちに驚いたけれど、私の気持ちを彼に知られるわけにはいかないのだ。

「冗談をおっしゃらないでください」

　なるべくそっけなく答えた。しかし彼はまったく気にしていない。

「俺は本気だよ、琴葉。もう少し時間をかけてもう一度君を手に入れるつもりだったけれど、ほかの男に横から奪われるのは困る。これからは本気で君をもう一度俺の腕に取り戻すつもりだ」

　あぁ、なんということだろう。まさか君塚との話を聞かれたことで、玲司がこんな宣戦布告をしてくるなんて。

「私は、そのつもりはありませんから」

「いいさ、それでも。俺があきらめが悪いこと、琴葉は十分っていうぐらい知っているはずだ。俺に逆らえるなら、逆らえばいい」