フラワーガールは御曹司の一途な愛から離れられない。……なんて私、聞いてない!
 振り向けば、案の定社長がいた。
 彼が右手を軽く上げたので、私もぺこりと頭を下げる。
 社長の隣りにいた金井さんは、私と同時に会釈した。

「お前はここで何をしているんだ?」

「花の搬入を待ってるんです。ちょっと早すぎちゃったかな……」

「そうか」

 社長はそう言うと、くるりと背を向ける。

「社長はどうしてこちらに…?」

「視察だ」

 聞けば、向こうを向いたまま返してくれた。

 そういう意味じゃなかったんだけどな。
 式場は、この上の上の階だし。

 なんて疑問を持っていると、トラックが到着する。
 運転手が降りてきて、「お疲れ様です」と声をかけようとしたその時。

「すみません!」

 慌てたような運転手の声に、首を傾げる。
 けれど、彼の開けたトラックの荷台を見て、事態を察した。

 嘘、どうしよう……!

 頭が真っ白になる。
 私の目に映ったのは、潰れた箱と散らばった花びらだった。
< 17 / 38 >

この作品をシェア

pagetop