義兄と結婚生活を始めます
「めっずらし……え、ロボコップもくしゃみすんの?」

「バカにしてます?」

「いやいやいや、だってくしゃみするとこ初めて見るんだもーん!」

「和真ー!探したわよ。コピー終わったわ」


ハンカチをポケットに入れ終えると、由梨子が笑顔でやってきた。
缶コーヒーを飲み干すとゴミ箱に捨て、由梨子とすれ違うようにして歩き始めた。

由梨子は、横を通り過ぎる和真の腕を掴み、引き留めようとした。


「和真ったら、私の分の飲み物も…」


しかし、和真はバッとその手を払ってしまう。


「…」

「…コピーは、50部ずつでよかったかしら?」


少し気まずそうにする由梨子は、ごまかすように払われた手で横髪を耳にかけた。


「はい。まとめ終えたら田辺さんに渡して、会議室に来てください…先ほどはすみません」

「べ、別に…いいわ…」


横目で見下ろす和真と目が合い、顔を赤くして逸らした。
和真は先に戻ってしまったが、一部始終を見ていた涼介も、コーヒーを飲み終えてゴミ箱に缶を捨てる。

そして、今度はお茶のペットボトルを購入した。


「由梨子ちゃんさー、諦めも肝心よ?和真も結婚したわけだし」

「な!なに!?おじ様に言われてした結婚なんて意味はないし、和真だって望んでしたわけじゃないわよ」

「…そ?じゃあ、和真自身が望んで結婚してたら納得するわけ?」


由梨子にお茶をポンっと渡すと、涼介も部署へと戻って行った。
残った由梨子は肩を震わせると、渡されたペットボトルをぎゅうっと握りしめる。

反論する言葉を飲み込む代わりに、唇を噛み締めるしかなった。





会議室に入ってきた由梨子に気づくと、和真は机に腰かけた。


「和真?どうし」

「距離が近すぎます。子どもでも、大学時代でもないんです。度が過ぎるスキンシップは誤解を招きます」

「そ、そんなには…!」


腕組みをして冷たく言い放つ和真に、由梨子は少し怯んだ。


「僕はもう結婚しているんですよ。社内で変な噂にされると、お互いが困ります」

「…結婚自体が嘘なんでしょう!?相手が明望にいるなら学生よね?籍なんて入れられるわけないじゃない!!」

「……社長から何をどう聞いたのか知りませんが、婚姻相手の親族を明望に入学させるなんて、小鳥遊では普通に行っているでしょう」

「子どもを相手にして…小鳥遊の名前と名誉を傷つけたいの!?」


由梨子の言葉にピクリと反応した和真は、一層冷たい眼差しを向ける。


「これ以上、話すことはありません。先ほど言ったことには注意してください」

「和真…!」


由梨子が振り返って呼び止めるものの、ドアの閉まる音だけが残った。

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