義兄と結婚生活を始めます
「…~…ごめん、今のなし。いや、なしじゃないけど…返事、待っててもいい…?」
「…えっと…」
「あおいの方が大変なのはわかってるけど…いつでもいいからさ…返事はほしい、かも」
真っ赤になるあおいは、俯いて小さく頷いた。
あおいの髪の毛を手放すと、一度深呼吸して、いつもの笑顔を見せる。
「放課後の勉強とかいつでも見るからさ!わかんないとこあったら教えるよ」
「…あ…ありがとう…」
また帰りの曲が流れ始めると、二人は鞄に教科書を入れたり、椅子を整えたりして帰り支度をした。
自習室を出た後も、黙ったまま並んで歩いた。
あおいへ視線を向ければ、赤い頬が髪の隙間からのぞき見える。
いまさらながら、祐希も顔が赤くなってしまう。
無言のまま玄関口まで来てしまった二人は、三森の車を見てようやく言葉を交わした。
「今日もありがとう…その…勉強も…」
「…うん、全然。俺から言ったことだし…」
「……えっと…じゃあ…また明日…」
あおいは俯いたまま去ろうとすると、祐希が手を掴んだ。
「俺…っ、今でもあおいのこと好きだから!」
それだけを言う祐希は、ようやくあおいと目が合った。
「ははっ、やっと見た」
「か、顔!見ないで!」
「やだよ。見たいもん」
ニヤッと笑ったあと、あおいの手を離して、車に乗り込むよう促す。
あおいもこれ以上何も言えず、後部座席に乗り込む前に一度止まった。
「約束、覚えててくれてありがとう」
「…おう!」
手を振ってあおいを見送ると、祐希は振っていた手を見つめて、そのまま顔を隠すように覆った。
恥ずかしさが一気に込み上げてきたのと同時に、あおいの状況を知って安堵する。
「……カッコ悪ぃ…」
急いた自分の気持ちに言い放つ祐希の顔は、今もまだ赤かった。
あおいは、車の中で両手で顔を覆っていた。
赤信号で停車していた際に、三森に心配されるものの、平静を装いまた隠す、を繰り返していた。
(わ、私…ここ、告白されたんだよね…?祐希くんに…?うそ…?えええ?)
「あおい様、着きましたよ?」
「わぁ!はい!ありがとうございます!!」
すでに開かれているドアから慌てて出ると、三森に頭を下げてマンションへと入っていった。
慌ただしく家に入り、自室の扉を閉めれば、力が抜けたようにズルズルと座り込んだ。
今までの祐希の行動や言動、約束のことを思い返すと、ようやく顔の火照りを自覚する。
(祐希くんに変なこと言ってないかな…)
自分の行動も振り返れば、気にかかって、だんだんと恥ずかしさが増してきた。