義兄と結婚生活を始めます

20話

…—


あれから二週間が経っていたが、和真の体調は少しずつ悪化していた。
毎日のように咳き込み始めていたが、マスクをつける素振りはなかった。


「すみませ、ゴホッゴホッ…」

「あの、マスク買ってきたので、明日からは」

「結構です。ゴホッ…仕事先では…出さないようにしているので…ゲホッ」


マスクの箱を手渡そうとしても、断り続ける和真。


「あの…病院とか…」

「…小鳥遊が騒動と化すので、ゴホッ…あまり行きたくはないのですが…明日、時間を取って行ってきます」

「えっ」

「ただの微熱で救急車どころか、総合病院の医師、看護師が総出で看病されるのは嫌です。マスクなんてつければ即入院となり、仕事が滞ります」


とある夜に言われた和真の話から、その様子を想像するあおいは、苦笑いするしかない。
財閥だからなのか、小鳥遊だからなのかわからないが、和真は周囲のオーバーな対応が苦手なことを理解した。

あおいは、のどの痛みを言っていた和真の食事は、なるべく負担をかけないメニューを心がけた。
市販の風邪薬も購入しようか悩んだが、飲ませてよいのかわからないため、やめた。



キッチンで夕飯を作っていたあおいは、玄関のドアが開く音に気付き、火を止めて向かう。


「おかえりなさい」

「ゴホッ…ゴホッ…いま…」


うまく言えない返事の代わりにコクリと頷き、あおいの頭をポンポンと撫でると、自室へ行く和真。
あおいは後ろから追いかけた。


「少し横になってください」

「ゲホッゲホッ…っ、大丈夫、です…ゴホッ…食事、持ってきてくださゲホッ」

「…わかりました…」


和真の部屋のドアが閉まると、ドア越しからでも聞こえてくる咳き込む声。


(…やっぱり、三森さん…小鳥遊さんのお家に連絡したほうがいいのかな…)


悩みながらも、温かいにゅう麵を用意したあおいは、盆に乗せると和真の部屋へ運んだ。
ドアをノックすれば、腕で口を押える和真が開けてくれる。

マスクを手に持っていたため、つけようとしていたことがわかった。
盆を和真へ渡すとすぐにドアを閉められた。


(私にできること、ないかな…)


できる限りのことはしたが、心配しかできない自分が悔しくもあり、悲しくもあった。





翌朝、休日でも早起きして和真の部屋の前で様子をうかがうあおい。


(……いや、これはやりすぎだし、違うか……)


うーんと唸りながらリビングへ向かい、キッチンでお湯を沸かす。
しばらくすると、カッターシャツにネクタイをつけた和真がやってきた。


「あ…おはようございま…え!?今日お仕事ですか!?」

「……はい」


キッチンにやってきた和真は、ぼんやりとあおいを見つめた。
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