義兄と結婚生活を始めます
意外にも、あっさりと抜け出せたことに安堵したところで、和真のポケットから通知音が鳴った。


「ひゃ!!」


驚くあおいは、ポケットからスマホを取り出して、表示される画面の名前に和真を見る。


「あのっ、あの!和真さん、涼介さんから電話です!」

「……出て…」


一瞬目を開けて呟くようにお願いすると、あおいは言われるまま通話に出た。


「も、もしもし…」

「あ、和真……じゃない。あおいちゃん?」

「はい!あの!和真さん、熱があって!それで今寝そうな感じで…!」

「オッケーオッケー。昨日きつそうな感じだったから、今日は休みにさせたよ。起きたら大丈夫って伝えてやって」


涼介の言葉でホッとするあおいは、お礼を伝えると通話を切った。
改めて和真を見て、ゆっくりさせられることが嬉しかった。

額を冷やすためのタオルを持ってこようと立ち上がりかけたが、何に引っぱられる。
ふり返ると、目を開けてまだぼんやりと見てくる和真が、服の裾を掴んでいた。


「和真さん…涼介さんが今日はお休みだそうで」

「どこ…行くんです…」

「え………タ、タオルを取りに…」

「ダメ…ケホッ」


まるで子どものように、服を離してくれない和真。
迷ったあおいは和真の手に触れて、顔を近づける。


「和真さん、冷たいタオル持ってきます。その後はずっとそばにいるので大丈夫ですよ」

「………」


囁くように優しく伝えると、掴んでいた和真の手の力が徐々に緩んでいった。
あおいは微笑むと、すぐにタオルを濡らし、和真の部屋へ戻った。

濡れたタオルをそっと額に乗せると同時に、和真は少し目を開けてあおいへ手を伸ばした。


「ゴホッ…ゴホッ…」

「いますよ、和真さん」


和真の手を取って言うと、和真は目を閉じた。


(私も、小学生の時、お母さんに甘えてたっけ…)


和真の一連の行動を過去の自分と重ねると、思わずふふっと笑うあおい。
握っていた手から、徐々に力が抜けていくのに気づくと、和真が寝入ったことがわかった。

なんとなく自分と和真が繋ぐ手を見て、いまさらながら顔が熱くなる。


「……甘えてくれてるんですか…?」


小さく聞いてみるが、和真の寝顔と寝息が返事をしてくれているようで、嬉しさを感じた。


(和真さんの新しいところ、見っけ。なんてね)


笑みをこぼすあおいは、和真の寝息を聞きながら、自分も目を閉じた。

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