義兄と結婚生活を始めます
あおいが目を覚ますと、もう昼頃になっていた。
自分も眠ってしまった後でも、和真との手は離れていなかった。

ゆっくり慎重に離し、すっかり乾いてしまったタオルを取ると、濡らすために洗面所へ向かう。


(うーん、やっぱり小鳥遊さんに連絡しなくていいのかなぁ…でも、涼介さんが休みって言ってたし…うまく言ってるのかな)


部屋へ戻ると、和真の額に再度タオルを乗せて、布団を掛けた。


「ん…っ…」


冷たさに反応したが、目を覚まさなかったことにホッとする。
離れない約束はしたが、手を握っていた方がいいのか少し悩んだあおい。

自分から握るということに対して、妙な緊張を感じてドキドキした。


「……」


ゆっくりと和真の手と自分の手を重ね、繋いでみる。
大きく、少しゴツゴツとしている手に、長い指は綺麗だと思った。


(…お、男の人の手って…お父さんと全然違う…!)


ふと反対の自分の手指を眺めてみた。
何度か手を掴まれたことはあったが、和真の手をしっかりと意識するのが初めてのあおいは、ドッと顔が熱くなる。


(何考えてるの、私!!)


考えを振り払うように頭を左右に振るものの、繋いだ手は離したくないという考えは払えなかった。
ほんの少し“約束”のせいにして、繋いだままにしたあおいは、和真の寝顔を眺める。

整った顔立ちの寝顔は、きっと世の中の女性は見惚れるだろう。
あおいは、じっと見つめながら初めて出会った日のことを思い出した。

まさか、初めて会った人と、代役でも結婚するなんて思わなかったあおい。

繋いだ手に力を込めてキュッと握った。


「…私が大人になったら、わかりますか…?」


あおいが呟いた言葉に、和真の手がピクリと反応する。
そして、ゆっくりと目を開けた和真は、最初に目に映ったあおいに少し驚いた。


「…あおいさん…?」

「あっ、よかった…何か飲みませんか?」

「ケホッ……」


和真は自分の手とあおいの手が繋がれていることに気づくと、あおいを見た。
ハッとしたあおいは、顔を赤くして慌てて手を離す。


「えぇえと、あの!えっと…!」

「…飲み物をいただけますか…?」

「はい!」


そばに置いていたコップをとり、お茶を入れると手渡した。
ゴクゴクと飲み干した和真は、ふーっと息を吐く。


「何かしら連絡はありましか?」

「あ、涼介さんが今日はお休みだって電話がありました」

「…そうですか。ゴホッ…連絡先は交換してませんね?」

「え?はい。ゆっくり休んで大丈夫だと言ってましたよ?」


キョトンとした顔で、不思議そうに返事をするあおいは、空になったコップにお茶を注いだ。
今度はゆっくりと飲んでいく和真。

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