義兄と結婚生活を始めます
「…少し待ってください」
和真は通話を消音にすると、我慢していた分の咳を出した。
息を整えると、あおいに問いかける。
「あおいさん、由梨子が挨拶したいそうなのですが…断っていいでしょうか?」
「えっ、と……挨拶します…!」
突然のことに戸惑うあおいだが、自分も由梨子が気になっていたため、何かしらのきっかけを掴みにいった。
一瞬、和真の動きが止まるものの、あおいの真剣な顔を見て、スマホを渡す。
深呼吸したあおいは、由梨子との通話を始めた。
「…は、初めまして、海崎あおいです」
「初めまして…じゃないでしょう?お久しぶりね、あおいさん。私、小鳥遊 由梨子。和真のいとこです。ずっと会ってお話ししたいって思っていたの。今度、お茶でもどうかしら?」
「はい…!もちろ」
「あぁ、お姉さんも一緒にお誘いしたいのだけど、ご都合は大丈夫?」
ドクンと嫌な音があおいの中で響く。
由梨子がすみれの話題が出たことに驚き、言葉に詰まった。
(この人…全部知ってるのかな…?)
不安を感じつつも、あおいはなんとか返事を返す。
「大丈夫、です」
「そう、よかったわ。女同士で話したいこともあるから、和真には内緒してね。楽しみにしているわ」
「…はい。わかりました…」
「それじゃあ、和真に代わってくれる?」
「はい…、あの、和真さん…」
スマホを和真へ戻すと、グルグルと思考と不安が駆け巡った。
和真が電話を切る頃には、考え込みすぎて思い詰めた表情になっていた。
「あおいさん?」
「………あ!はい!」
「由梨子が、何か失礼なことを言いませんでしたか?」
「はい!和真さんのこと、心配してました…」
和真に嘘をついてしまったことに、チクリと胸が痛みつつも、笑顔で返事をした。
すると、和真が黙って手を差し出してくる。
「先ほどお願いした、手を貸してほしいのですが」
「は、はい…」
反射的に返事をした後、和真の手を握った。
まだ熱が高いとわかるが、この熱さがあおいの不安を拭ってくれているように感じた。
「ケホッ…大丈夫です」
「…ありがとうございます。ここにいるので、寝てください」
あおいに言われるがまま、ゆっくりと体を横にすると、ギュッと手を握り直してあおいを見つめる。
「前から思っていたのですが、小さいですね、手…」
「か、和真さんが大きいんですよ…!」
「…ふふ…」
口元を緩ませる和真は、ウトウトし始めるが、眠って離してしまいそうになる度に目を開けようとした。
クスっと笑ったあおいは、自分からギュッと握る。
「ちゃんといますよ、大丈夫です」
先ほどの和真の言葉を返すと、和真はようやく眠りについた。