義兄と結婚生活を始めます
…ー
とうとう由梨子との約束の日。
日曜日の午前10時40分に、Nカフェ前に到着したあおい。


(早すぎた……)


前日はなかなか眠れなかった上に、今も大きな緊張と不安を抱えている。
時間を確認する度、分単位しか進んでいない。


(…すごく綺麗な人だから、すぐにわかる…はず…)


ふと、道行く人の視線が一方向に向かっているのに気づいた。
顔を上げて視線の先を見ると、まるでモデルが歩いてるかのように、綺麗な足取りでヒール音を響かせる由梨子がいた。

赤地に白のワンラインが入ったワンピースと、白のヒールにサングラスを掛けている。


(…綺麗……)


惚けて見ていると、由梨子はあおいの前で立ち止まった。


「意外だわ。先に来るなんて」

「…あ…あのっ、お久しぶりです!よろしくお願いします!」


早口で言い切ると、すぐにお辞儀をする。
しかし、由梨子は構わずカフェの扉を開けて中は入って行った。

慌てて続くあおいは、由梨子が座った反対の席へ座った。


「それであおいさん、お姉さんは?」

「えっと…た、体調が悪くて…来られませんでした…」

「だったら前日に連絡できたわよね?」

「すみません…」


サングラスを外していると、いつ注文したのか、飲み物が届いた。
由梨子の前にはカフェラテ、あおいの前にはオレンジジュースが置かれる。


「あの…姉はいませんけど、お話って…」

「私ね、ずっと不思議に思ってたの。初めて会ったときは、和真が"妻"って言っていたけど、食事会ではすみれさんが妻だってお母様に聞いたわ…これってどういうことなのかしら?」

「…それ…は、その……」

「正直に言って、不愉快よ。小鳥遊を何だと思ってるのかしら?」


カフェラテをカップを取ると、一口飲み、置く。
その所作は、ただの高校生のあおいから見ても、とても綺麗だった。


「…すみません…」

「私と和真、一度婚約の話が上がっていたの。なのに、仕事で日本を離れている間に、別の女性と結婚しただけじゃなくて、それが高校生の子ども?どう考えてもおかしいわよね?」

「……」

「だから私考えたの。和真に無理を言って、夫婦ごっこさせてるんじゃないかって」

「ち、違…っ!」


ジロリと由梨子から睨まれると、あおいは体が萎縮してしまう。

膝に置いた手は少し震えて、ギュッと握りしめた。


「お、お姉…姉が結婚式でいなくなって、わ、私が代役として妻を振るまることで、話がつきました…!小鳥遊社長さんも、そうしてほしいって…」

「そう、おじ様が…それじゃあ、話は早いわね。あおいさんは子ども。小鳥遊の跡取りが未成年と住んでるだけでもスキャンダルになりかねない…。そうね、形式上でいいから、和真と別れてくれないかしら?」

「…え…?」


カップ持ってニコリと笑う由梨子は、カフェラテを飲んだ。

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